みなさんは、風邪をひいたら、あるいは発熱したら医療機関を受診して抗生剤を飲まなければ治らないと思い違いしておりませんか? いわゆる「風邪」の8〜9割はウイルス性上気道炎で抗生剤は効きません。効かないだけならまだしも、下痢や肝機能障害などの副作用や、時には極めてまれですが失明することもあります。また、抗生剤の乱用により細菌の耐性化(抗生剤が効かなくなる現象)が進んでおり、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌:注)やPRSP(ペニシリン耐性肺炎球菌:注)等は院内感染だけでなく、地域や保育園、幼稚園、学校での広がりも懸念されております。
確かに昔は病院に行けば当たり前のように抗生剤をもらって帰ってきました。
でも、思い出してみてください。私が子供の頃のかなり昔は、病院に行くとかなりお金もかかるので、発熱したらすぐに病院に行くという時代ではありませんでした。たぶん、今現在、小さな子供を育てているお母さん方が子供だった頃も・・・。
昔、多くの親(今のおじいちゃん、おばあちゃん達)は、子供が発熱しても、置き薬を与えてそっと横で見守っていたはずです。それでもどうしても熱が下がらないと病院に連れて行きます。この間、発熱してから2〜3日程度は時間が経っていて、この段階で抗生剤が処方されます。
現在みたいにインフルエンザや溶連菌、アデノウイルス等をその場で判定する迅速検査もなかったし、白血球数・CRP値がすぐにわかる血液検査機もありませんでした。さらには衛生状態や栄養状態も悪く、細菌感染が多かったのでその時代はそれで良かったのです。
でも、今はどうでしょう? 少子化対策の乳幼児補助のおかげで多くの乳幼児が無料で医療機関を受診できるようになりました。また、補助がなくても大事な子供だからお金がかかろうが早く病院を受診させる方も多くなりました。鼻水がでたら、あるいは37度前半の微熱があるからとすぐに・・・・。
多くの医療機関では、風邪で患者さんが受診すると言うことは、抗生剤を欲しがっているものと思い、なんの説明もなく抗生剤を処方することがほとんどです。
また、近年の開業ラッシュのため医療機関側は過当競争になり、早期に患者さんを囲い込まなければなりません。一部の医療機関ではこの囲い込み手段の一つとして、子どもの場合は、『鼻水がでたら、発熱したら、すぐに受診を促し、必要か?不必要か?は関係なく、いかに早く最新かつ強力で子どもに喜ばれそうな美味しい抗生剤を手渡す』ようです。
こんな馬鹿げた競争の犠牲になっているのは子供達です。今の子供達はお母様方に比べて数倍もの抗生剤を乳幼児期の間に飲むことになってしまいます。抗生剤が栄養サプリやヤクルトのように毎日飲んで良いようなものなら、毎日の食事に抗生剤を混ぜて子供に与えた方がいいかも知れません。でも、副作用や耐性菌の問題でそんなことがいいわけありませんよね! もちろん、わたしの3人の子供達は抗生剤漬けとは無縁です。
抗生剤の乱用によって引き起こされる耐性菌の蔓延は地域社会の共有すべきリスクと認識し、さらに我が子を守るためには「風邪」で抗生剤が処方された時には、「この抗生剤は必要ですか?」ときちんと医師に聞いて治療法を確かめることをお勧めします。
注:MRSAやPRSPはペニシリン系抗生剤だけに耐性があるような名前ですが、多くはセフェム系薬剤の乱用で引き起こされ、もちろんセフェム系抗生剤も効き難くなっております。なお、1歳児が市中型MRSAによる肺炎で亡くなったことが数日前に報道されておりました。
(平成19年4月記)
湯水のように抗菌薬(抗生剤)を乱発処方していたクリニックも最近では手のひらをを返し、あたかも昔から使っていないような顔をしております。うれしいような、ちょっと寂しいような・・・(^^;)。これもヒブ等の予防接種が普及したおかげだと思うようにします。
また、抗菌薬を頻回に服用しているとアレルギー体質になり易い(衛生仮説)とか自己免疫疾患になり易い。そんな論文も多数でてきました。
(平成28年4月9日追記)
フロモックス、メイアクト、トミロン、オラペネムなどの抗生物質連用により低血糖(意識障害・けいれん)
http://blog.goo.ne.jp/cuckoo-cuckoo/e/e6fbf1bce72e87279129f757d75ff390
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(平成28年5月1日追記)
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